認知症診断その3

認知症早期診断における画像検査の位置づけとは?

イクメン精神科医のダディーです。

前回までの中で画像診断はなるべく可能であれば受けた方が良いという点、

しかし、画像診断が現実的に出来ない場合も多々ある点、

更に、多くの場合はそれで問題ないが、画像診断が非常に鑑別診断に有効である場合がある点

を説明してきました。

今日は、認知症の早期診断における画像評価の位置づけを考えてみましょう。

進行した認知症の場合、当人は「自分には特に問題はない!」と断言してしまう事が多いということは以前お伝えした通りです。

一方で、早期の場合は

「最近物忘れが気になる」

「テレビで言っていた症状と同じ状態で心配だ」

「家族が調べた方がいい、と言い自分も心配なところが実はある」

などの発言が多い傾向にあると思います。

そうした方は、先に書いた簡易検査でも認知症のカットオフ値を切ってしまう事が殆どありません。

では認知症ではないか、というとそうでもない、という何とも煮え切らない状態になります。

そこで画像検査が重要になってきます。

脳みそがスカスカ = 認知症??

まず、この疑問から考えてみましょう。

先に正解を述べますが、画像検査で脳みそがしっかりと詰まって見えても認知症の診断がつくことはあり、逆に画像上脳みそがスカスカでも認知症ではない方もたくさんいます。

では、画像検査ではどういったところを評価していくのでしょうか?

まずは早期診断に有効な画像検査に何があるのかお伝えします。

CTは認知症の早期診断には多くの場合役に立たない!!

これ重要です。受診した施設にCTしかないのであればやらないよりはましですが、以下に記載するMRI等検査が可能なのであればCTは不要です。何故なら脳の萎縮の程度を客観的に評価することが難しいからです。(一方で微小な脳梗塞の程度七度に関してある一定の情報を提供してくれることもあります。)

 

少し難しい話になりますが、例えばある患者さんの頭のCTを撮影して、それが標準の同世代の方と比較してどの程度縮んでいて、それが病的であるかどうか、という事を評価することがCTでは出来ないので、撮影しても

評価者の主観で「縮んでる、縮んでない」とみているにすぎません。

一方MRIでは患者の脳の萎縮が標準よりも病的に縮んでいるのかどうかを解析する統計解析ソフトが存在するため、その比較の結果CTよりも得られる情報量が多くなります。

ですので、

MRIとCTの両方が撮影できる場合、MRIの撮影を希望した方が意味があると思ってください。

ただし、MRIの方が圧倒的に撮影時間が長いため、進行した認知症患者には実質不可能なことが多い事は明記しておかねばなりません。

ここでちょっと話がそれますが、

先ほどの簡易検査で認知症のカットオフ値を切らないけれども満点でもない、という方たちをどのように考えたらよいのか、考えてみましょう。

大きく分けて

①年齢相当の衰え

②今後認知症に発展していく前駆状態

の二つに分けられます。

人間は年を取るとある程度物忘れが出現し、頭の回転が悪くなったりします。

これは皆さんがすでに昔よりも「物覚えが悪くなった」と実感されておられることと変わりません。髪が白髪になったり、腰が曲がったりすることと同じです。いわゆる老化現象です。

一方で②は見過ごせません。②に関してはなるべく早期に①ではない事を見つけてあげて早期に介入していくことがいずれ来るべき認知症に備えることが出来ることを考えると大きな意味があると思います。

そこで①と②はどのように区別できるのでしょうか?

軽度認知障害 mild cognitive impairment (MCI)という概念を覚えましょう

実は、①も②もMCIという概念の中に入ります。

MCIとは簡単に言えば認知症と診断をつけるほど認知機能障害があるわけではないが、認知機能障害が全くないわけではない、という状態です。

真っ白ではないが、真っ黒でもない、グレーゾーンの状態です。

しかし、残念ながら実はずっと認知症にならずにMCIの状態でいられる方は少なく、疫学のデータではMCIのうち年に10%は認知症に進行してしまう、と言われています。よって、例えばX年に100人のMCIの方を経過観察すると、5年後にはその半分が何らかの認知症に進行している、という事になります。

そこで、いよいよ認知症早期診断における画像の評価の理想をご提案します。

MRI ± SPECT

SPECT?このブログで初めて出てきた言葉です。

ご存じでない方も多いと思います。

SPECTという検査はまず、町医者では不可能です。

市民病院でも置いていないところが多々あります。

試しに撮って診る認知症というサイトで検索してみてください。

本当に限られた施設でしか撮影できません。

そこで早期診断に関しては現実的にMRIで脳の萎縮の程度を統計解析し、疑わしい場合にさらにSPECTも検討する、という事でよい、と専門家である私は考えています。

SPECTとは何をみているのでしょうか?

MRIは簡単に言えば脳の形の評価です。

SPECTは形ではなく、脳の「血流」の評価です。血流が落ちているところが機能が低下している所、という認識でOKです。

勿論脳が委縮しているところは血流も落ちるので、血流が低下しているように見えるのですが、そういった形態的な変化が出てくる前に血流低下の所見がみられるため、血流低下のパターンから認知症の鑑別診断がつく、という事が早期診断において見られます。

認知症かな?と思い、MRI、SPECT検査を行い特に問題ない、という検査結果になった場合、とりあえず現状認知症ではない、と考えてよい、という事になります。

しかし、それは今後認知症に進行しない、という事ではないので定期チェックが必要になります。

 

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