ここ最近高齢者による悲惨な事故がニュースに頻繁に出ます。
それはセンセーショナルだからニュースになっていて、それを目にする機会が多いのか、それとも実際に高齢者の起こす事故件数が多いのかどちらなのでしょうか?
そして仮に高齢者の起こす事故が多いのだとしたら、何故高齢者は事故を起こしやすいのでしょうか?
前回のハナクソの投稿とは打って変わって、今回は高齢者の運転に関して専門家としての考えを書いていこうと思います。
高齢者の事故件数って多いの?
警視庁の統計を見てみましょう
警視庁交通総務統計引用
これをみると交通事故発生件数は年々減少しているのに対して、高齢者の事故件数は増えている事がわかります。
やっぱり高齢者の事故は多かったんですね。
この結果をもってして、ただセンセーショナルなだけではなかった、という事になるのでしょうか??
どう思いますか?
🙄この結論に飛びついていいのでしょうか??🙄
ここでちょっと考えておきたいのは、
日本は現在進行形の超高齢社会です。ですから、
若者よりも高齢者の人口が多くなっていってるので、必然的に高齢者の事故件数が多くなっているように見えるだけなのでは?
という事です。
人口という因子を調整すると、若者の方が事故を起こしている、という事になったりしないのでしょうか?
更に調べてみましょう😀
平成28年における交通事故の発生状況を参考に検証していきます。
ありました。17ページの
「 原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移」
を参照してみます。
平成28年における交通事故の発生状況、より引用
あれ?
人口のファクターを考慮すると、16歳~19歳が一番事故件数が多いじゃん。
しかもその次は20歳~29歳。
高齢者の事故件数は人口のファクターを考慮すると若者よりもはるかに少ないのではないかしら?
人口のファクターを考慮するって意味が分かりにくいかもしれません。
-😖😖😖-
人口のファクターを考慮する、というのは例えば
若者10万人中事故を起こす若者、と老人10万人中事故を起こす老人、という形で比較することを言います。こうすることでより正確な話が出来ます。
例えば、自分の住んでいるマンションにアメリカ人が多い場合に、この地域にはアメリカ人が多く住んでいる、とまで言っていいのかどうか、というような事を考えています。
え?余計にわかりにくいですか?
あなたの周りの高齢者がたくさん事故を起こしていたとしても、それは高齢者が周りにたくさんいるだけであって、
めったに会えない(??)若者の方がヒャッハーして事故を起こしているのかどうか、という事をデータから検証しています。
次に全体の事故件数をみてみましょう
平成28年における交通事故の発生状況、より引用
この二つの図を見比べて面白いのは、
人口というファクターを考慮すると、16歳~19歳の運転による事故が顕著であることがはっきりするのに、
人口という要素を考慮せずに総数で語った瞬間に若者の事故は目立たなくなる点です。
また、80歳以上の事故の件数は総数では上昇傾向であることは間違いないのですが、人口というファクターを考慮して比較してみると、むしろ減少傾向にある事がわかります。
簡単に言えば、
人口の高齢化に伴い、高齢者の事故が多いような気がするが
それは高齢者の比率が増えているからそのように見えるだけであって
交通事故自体は16歳から19歳の若者が起こす方が多い
という事になります。
若者は無鉄砲な傾向にあるという事がデータでも出ている事になるのでしょうか。
死亡事故は高齢者に多いの?
更に調べていきましょう。
今度は平成28年における交通死亡事故について – 警察庁というデータを参照していきます。
平成28年における交通死亡事故について – 警察庁、参照
これを見ると、死亡事故に関して人口という因子を考慮した場合、若者の方が80歳以上の高齢者よりも死亡事故を近年多く起こしている事がわかります。
そして80歳以上の高齢者の死亡事故件数は人口を考慮すると減少傾向にある事も読み取れます。
同様に死亡事故総数を見ていきましょう
平成28年における交通死亡事故について – 警察庁、参照
このデータからは当たり前かもしれませんが、一番日常的に車に乗っている世代が一番死亡事故を起こしている、という事になります。
また、80歳以上の高齢者の死亡事故件数総数も年々増えている、という事になります。
このように年齢別の人口当たりで考えた場合と、事故総件数とでは解釈に違いが出てきます。
ちょっと複雑になって来たので、まとめておきましょう。
まとめ。高齢者は危険な運転をするのか?
・全国の事故件数が減少傾向である中、高齢者の起こす事故件数は増加傾向にある。
・しかし年齢別に人口の要因を考慮してみると、むしろ若者の方が事故件数が多い事がわかる。
・死亡事故に関して、80歳以上の高齢者の死亡事故の総件数は増加傾向である。
・しかし、人口を考慮するとこの10年間で80歳以上の高齢者が起こす死亡事故は減少傾向であり、16歳~19歳の若者が起こす死亡事故件数の方が多い。
・以上のデータから、一概に高齢者の運転が危険と決めつけることが出来ない(という事が読み取れます。)
お疲れさまでした。
複雑ですねぇ、、、ちゃんと皆さんついてきていますか?
更に簡単にこれまでの事をまとめれば
高齢者がたくさん周りにいるので、交通事故を起こす高齢者が目立つような気がするが、実際には高齢者よりも数が少ない若者の方が事故を起こしている。だから高齢者の運転は危険だ、と断罪することは必ずしも正しくない。
という事になります。
でもじゃあ、高齢者の運転には制限をかける必要がないのか?という話になると、そう単純にはいきません。それは加齢とともに確実に判断力含めた認知機能の低下が生じてくるからです。
次回は加齢に伴う変化で運転にマイナスに作用するポイントをまとめていきましょう。
お疲れさまでした。
世間を騒がせている認知機能低下と運転能力に関して更に詳しく次回書いていきます。
(更にその後ネットの記事を検索していたら、私の考察より遥かに知的でわかり易くこのデータを検討している記事がありました。興味がある方は是非読んでください。この存在を知っていたら、頑張ってまとめる必要なんてなかったわ、、、泣)
<参考文献>
- 平成28年における交通事故の発生状況
- 平成28年における交通死亡事故について